話題のナレッジベース | Knowledge Base Weblogs space
HOMEBlogs index ゲーム/GAME >> space
space space
space
space
space
space
January 9, 2007 space
   space
space

日本のゲームソフトはなぜ高い!?

space

日本のゲーム産業において、コンシューマ機ビジネスの最大の問題は何かという議論をすると、ゲーム会社の人はまず「中古問題」を上げる。
 
 
2002年に最高裁が「中古テレビ・ゲームの自由流通は合法」という判断を下してから、日本にはゲーム産業の公式統計データには出てこない巨大な中古市場が形成された。それが新作ソフトの値上がり、ひいては消費者のゲーム離れにもつながっている。
 

space

 
 新作タイトルの売り上げは97年の5833億円をピークに、2005年は3141億円とほぼ半減しているが、中古問題はその最大の原因であるといわれる。最高裁判決が出てからそれまで中古を取り扱ってなかったゲームショップも一斉に開始したために、いきなり新作タイトルの売り上げが減少するようになった。
 
 
 店舗とユーザー間を中古が循環
 
結果論ではあるが、中古裁判はゲーム会社にとっても小売店にとっても、いい結果をもたらしたとは言えない。
 
新品のゲームは初代「プレイステーション(PS)」の時代には5800円が基準だったが、PS2の時代になると、円安などの影響もあり6800円に上昇した。そして現在は、大型タイトルであればさらに高い値段になるトレンドが一般化している。来日したアメリカ人が日本のゲームショップに行って、いつも驚くのがその値段の高さである。北米に比べると、日本の新作タイトルは明らかに高い。例えば「ファイナルファンターXII」の新品の値段が8990円と設定されていることをみると誰もが驚く。
 
ゲーム会社がこの値段を付けざるを得なくなったのは、中古裁判以後、新作ゲームを発売してから2週間でほとんど勝負が終わってしまうという悪循環ができたためだ。
 
再販制度の対象である書籍やレコードとは違い、日本のゲームソフトは小売店からの返品がきかない。例えば、新作を10本仕入れたとしても、1本売れ残れば、9本を売ることで得られた利益が吹き飛んでしまう。新作はできるだけ仕入れず、速やかに中古をユーザーから買い入れて販売する方が、利益率が高いという結果になってしまう。
 
そのため、ゲームショップは発売からできるだけ早く、中古主体の販売に切り替える傾向が強まった。早ければ早いほど、ゲームメーカーが行っている新作のプロモーションに長くただ乗りできる。中古ソフトであることを気にしないユーザーは、新作と500円から1000円程度の差であっても安い方の中古を買う。
 

ゲームショップは時期が経過していくにつれて中古の買い入れ価格を段々と引き下げていき、中古の商品はユーザーと店舗の間をぐるぐると循環していくことになる。「FF」といった人気タイトルは1年以上も中古ショップで売れ続ける。新品の価格が高ければ高いほど、中古としても長く価値が出るという皮肉な結果にもなっている。
 
結果的に引き起こされたのが、ゲームショップとゲームメーカーとの解決できない厳しい対立関係である。当然のことながら店舗の品揃えは、中古商品として長く価値を持ちやすい売れ筋のゲームだけに集中する。実際、店舗の品揃えは悪化した。
 
中古は店にいつ在庫があるかユーザーには見えにくく、価格設定の変動もわかりにくい。普段からゲームショップに行き慣れたり情報を仕入れたりしないと、ほしいゲームをほしい価格で手に入れることはできない。そのため、ゲームショップ自体の敷居が高くなってしまい、ゲーマーでないユーザーが近寄りがたい雰囲気へと変わっていってしまった。それがユーザーのコンシューマ機離れの一因であるのは否定できない。
 
そもそもショップが仕入れを絞るため、新しいジャンルを開拓するようなゲームが発売されても、いきなり100万本を売るようなことはまず起きなくなってしまった。PS2用の「塊魂」や「ワンダと巨像」といった高い評価を得たタイトルであっても、結局は十数万本しか売ることができない。何かの賞を受賞して話題になっても、そのころに店舗にあるのはほとんどが中古という状態なのだ。今ではコンシューマ機向けゲームに企業が新規参入する余地がほとんどなくなっている。日本の市場が成熟化してしまったといわれる所以である。
 
では、販売好調な米国市場の場合は問題がないかというと、必ずしもそうではない。米国は米国で独特の商習慣があり、その影響で成熟化が進んでいる。
 
 
 売れないソフトは叩き売り
 
米国は日本とは逆に、ゲーム会社よりも米国GDPの3%を売り上げる超巨大スーパーチェーンのウォルマートや、おもちゃチェーン大手のトイザラスといった小売店の方が立場が強い。そのため、タイトルは基本的に100%返品可能と日本とはまったく逆の条件になっている。
 
返品なしとすることもできるが、売れないタイトルや時間が経過してきたタイトルは、小売店の側が一方的に値下げを行う。大体は49ドル(Xbox360やPS3のタイトルは59ドルに値上げされた)から開始され、売れなければ値下げが始まり、すぐに19ドル程度、最後には9ドルで投げ売りされる。
 
しかも卸値との差額分は、他のタイトルの納品で補填するか、支払わないという商習慣になっている。そのため、米国にも中古市場は存在しているものの、価格調整機能を新品タイトルで行うことができるため、日本ほど高度に洗練された形で発展していない。
 
米国の大手小売店はまた、各店舗の展示スペースも値段を付けて販売している。ゲーム会社は店頭で目玉商品として扱ってもらうためにはかなりの場所代を支払わなければならず、プロモーション費用も小売店から請求される。ただし、新作自体の商品寿命は日本より長い。ヒットタイトルでは1年以上売れ続けるものもある。
 
こうした商慣習から、北米でゲームをリリースするには、かなりのキャッシュフローを必要とする。そもそも国が広いため北米全体に商品を流すコストは日本より高く、また、いくら小売店から支払いが行われるのかが明確でないため、パブリッシャーの間の力関係に大きな差を生みだすことになってきている。
 
そこを勝ち抜いたのが巨大パブリッシャーのエレクトロニックアーツ(EA)であって、様々な開発会社を買収して多数のタイトルを抱え、豊富なキャッシュフローをバックに大きなプロモーションを行うことができる体制を作り上げた。他の企業とは力関係で大きな差がついてしまったため、できが少々悪いタイトルであっても、EA製のゲームが売り場を占拠し、プロモーションで売れるというパターンができている。日本と同じように、まったく新しいジャンルの新作はいくらできがよくても売れない傾向が強い。
 
米国では、このパブリッシャーとディベロッパーの対立が深刻な問題として議論されている。巨大パブリッシャーのタイトルに有利に市場が成熟し、中小の開発会社が新しいタイプのゲームをリリースすることができない状態に対して、ゲームの可能性が閉じようとしていると危機を訴える指摘が、ここ数年活発に行われている。
 
 
 オンライン販売は解決策になるか
 
これらの問題の解決案として登場しているのが、オンラインを通じた販売である。小売店を抜かして直接ユーザーにダウンロード販売する戦略である。パッケージの商品としては流通しにくいようなゲームをリリースしようというのが基本的なコンセプトである。
 
いち早くこのモデルをPCで確立したのが韓国型のモデルであり、Xbox360の「XboxLive」やPS3の「PS3 Network」、Wiiの「バーチャルコンソール」も同様のコンセプトである。ハードを絞り込めるため中古販売ができず、新しい実験的なタイトルもリリースが容易になる。
 
しかし、このモデルの問題点もすでに指摘され始めている。「XboxLive」ではデモ版のリリースが非常にプロモーション効果を上げることが実証されつつある。カプコンの12月発売のアクションゲーム「ロストプラネット」は、5月の「E3」にあわせて公開されたデモ版が100万回以上ダウンロードされ、大きな話題になった。
 
しかし、結局デモ版を専門に作れるスタッフを用意できるような企業の方が有利になるという展開も同時に起きている。今、Xbox360向けのダウンロード可能なデモ版は、EAのタイトルがずらりと並んでいる。しかも、なかには1ギガ近くあるものもあり、数時間遊べるほどのボリュームがある。
 
結局、オンライン販売に移っても現状で有利な状態を築いている企業がそのまま有利になるのではという危惧が指摘され始めている。
 
現時点で、こうした問題に比較的うまく対処しているのは、やはり任天堂といえる。「DS」向けのゲームは5000円以下の価格のものが多い。「脳トレ」は2800円で、ゲームソフト業界に革命的なデフレを引き起こした。DSの価格に慣れてしまうと、PS2などの他のコンシューマゲームがあまりに高額だと感じるようになってしまう。また、日々の記録を付けることをゲームに絡めることで中古に売りにくい商品構成にしてある。
 
バーチャルコンソールにしてもクレジットカード決済も可能なものの、どちらかというとゲームショップでのプリペイドカードの購入を促すようにして、既存の小売店との対立を小さくできるように気を配っている。Wiiでは現時点ではデモ版といったものも、派手にリリースを開始していない。やはり、「強力すぎるパブリッシャー」となる弊害も考えていることがわかる。
 
今後数年で、ゲーム産業のビジネス環境が劇的に変化することは間違いないが、まだ最終的な方向は見えていない。ただ、既存のゲームショップにとっては、いつ梯子を外されても不思議でない、あまり有利な状況ではないのは確かである。
 

space
HOMENews Blogsゲーム/GAME | January 9, 2007 |  twitter Livedoor Buzzurl はてな Yahoo!ブックマーク人が登録
space


space Entries of this Category
space

  Next >> 「iPhone」遂に!iPod携帯電話発表....アップル コンピュータにさよなら・・ >> 

iPod携帯電話「iPhone」発表....アップルコンピュータが9日、開催中のMacworld 2007で、遂に!やっと!?ず〜っと噂されていた「iPod」の携帯音楽プレーヤ...»この話題を見る…


  Previous << 流行語大賞 2006年USでは「プルートしちゃう」? << 

米方言学会は5日、地球の惑星から除外された冥王星にちなみ2006年の流行語大賞を「プルートしちゃう」に決定した。      国際天文学連合が昨年8月、冥王星を惑星から外すことを... »この話題を見る…


space
space
Welcome to knowledgeBase  Blogs  ▲TOP