滅びの美学「シャア」や「フランダースの犬」に感動する日本人の価値観

　
　年末の時期ということもあり、懐かしいアニメ作品を多く目にする機会があり、ファースト・ガンダム作品が何本もCSで放送されていました。「滅びの美学」それは、ガンダムで言えばシャアの存在、ヤッターマンのドロンジョ率いるドロンボー一味、宇宙戦艦ヤマトのデスラー総統、リアルな歴史の中にも、吉良家への討ち入りで知る赤穂浪士、白虎隊など悲しくもその行動に共感を覚える。これは長年のテレビ放送で記憶に刷り込まれた価値観の操作なのだろうか？
　

　
　宮崎駿氏の作品として有名な「天空の城ラピュタ」や「ナウシカ」は、イースター島のモアイ像など「文明の滅び」を語っているとされていましたが、現代社会の文明が行き着く先の未来世界を暗示する残る数々の遺蹟や文明から導き出した、ひとつの答えとして「滅びの象徴」しているとされてきました。
　

　
　私が好きな映画作品として、なぜか毎年年末に「アルマゲドン」を見ています。なぜか毎回３回は泣けるのです。自分の涙腺が弱いのか、刺激が強いのか。このアルマゲドンも思えば「滅びの美学」に繋がる作品ではないでしょうか。話は壮大に地球の消滅を食い止めるために働く？オッチャンの話ですが、自分を滅することで地球と愛する家族を守る米国映画の王道作品かもしれませんが、何度見てもせつない気持ちになると判っているシーンで涙があふれ出します。この映画が好きな方には、「インデペンデンス・デイ」もオススメです。
　　

　
　しかも、このようなテレビの有名作品だけではなく私達が知る、過去の文学作品にも多くの「滅びの美学」があることを知っています。太宰治の「斜陽」や「人間失格」、そして三島由紀夫の「金閣寺」や「仮面の告白」など、こうした文学で描かれる「滅びの美学」は、太宰の文章の中にある「生まれてきてごめんなさい。」という言葉に表されていたのです。三島のように、滅びの美学とともに自らポジティブに生きる為に、己の肉体を磨き思想とする言葉と融合を図り、思想を貫く意思を持って滅ぶことを選ぶ人もいるのです。
　

　「フランダースの犬」日本人だけ共感…ベルギーで検証映画
　
　ベルギー北部フランドル（英名フランダース）地方在住のベルギー人映画監督が、クリスマスにちなんだ悲運の物語として日本で知られる「フランダースの犬」を“検証”するドキュメンタリー映画を作成した。
　
　物語の主人公ネロと忠犬パトラッシュが、クリスマスイブの夜に力尽きたアントワープの大聖堂で、２７日に上映される。映画のタイトルは「パトラッシュ」で、監督はディディエ・ボルカールトさん（３６）。制作のきっかけは、大聖堂でルーベンスの絵を見上げ、涙を流す日本人の姿を見たことだったという。
　
　物語では、画家を夢見る少年ネロが、放火のぬれぎぬを着せられて、村を追われ、吹雪の中をさまよった揚げ句、一度見たかったこの絵を目にする。そして誰を恨むこともなく、忠犬とともに天に召される。

　
　原作は英国人作家ウィーダが１８７０年代に書いたが、欧州では、物語は「負け犬の死」としか映らず、評価されることはなかったとしていますが、これは原作に対する評価であって、日本のアニメ作品は、「フランダースの犬」を題材にインスパイアした創作アニメなのですから、海外作品との違いが大きくこれだけで記事にあるような、作品に対する評価や価値観の相違があるとは一概に思えません。
　
　しかし、過去に米国で５回も！？映画化されているが、そのお国柄なのでしょうか、いずれの作品もエンディングがハッピーエンドに書き換えられたそうです。原作の悲しい結末を受け入れた？のが日本でのみで共感を集めたのかが、ストーリー構成上の謎とされてきたようです。
　
　それぞれのお国柄で好評を得るためのシナリオ展開や構成が重要なポイントとなるのは、その国の文化、思想など価値観が大きく影響することは容易に想像できます。ボルカールトさんらは、３年をかけて「フランダースの犬」から受ける日本人の価値観の解明を試みて、世界６か国での計１００人を超えるインタビューから浮かび上がった答えの一つとして、日本人の心に潜む「滅びの美学」だった。としています。
　
　これからプロデューサーのアン・バンディーンデレンさん（３６）は「日本人は、信義や友情のために敗北や挫折を受け入れることに、ある種の崇高さを見いだす。ネロの死に方は、まさに日本人の価値観を体現するもの」と結論づけたようです。
　
　この価値観と言うのか思想と言う部分は、「フランダースの犬」以外の作品にも多くの共通する部分があり、これを「滅びの美学」とする考え方、捕え方もあるでしょう。
　
　そして、この価値観の部分で言えば、日本の住宅に木造住宅が多かった時代には、思い出の詰まった家の取り壊しの際に感じる切なさや哀愁、記憶の中に残る思い出など感傷的な部分がモノと同時に存在していました。
　
　自分の大切にするモノが決して金額的価値が高いものではなくとも、大切にする気持ちなどが共通の記憶として存在するでしょう。この記憶に残る部分が、その対象がモノであっても、放送されたアニメであってても同じく記録され残る場合に、その記憶に対して思い出として価値を感じることができると思います。
　
　あなたはどう感じますか？一度、自分の価値観がどこにあるのか、感動する映画や記憶に残るアニメなどを思い出して考えてみるのもいいかもしれませんよ。
　
　
■アルマゲドン ： 年に１度の3度泣き、なぜか毎年年末に見てます！

ウィキペディア（Wikipedia）
■シャア・アズナブル
■元禄赤穂事件
■白虎隊