ボイセンベリー ポリフェノールが中皮腫抑制

　
　安達助教授らは、ボイセンベリーに含まれるポリフェノールに発症抑制効果があるのではないかとみて、確認実験を進めている。
　
実験では、アスベスト１０ミリ・グラムを腹部に注入したラット４０匹のうち２０匹にボイセンベリーの粉末を２％混ぜた餌を、残りのラットに通常の餌を与え、１年間観察した。その結果、通常の餌を与えたラットの１４匹が中皮腫を発症したのに対し、ボイセンベリーのグループでは７匹にとどまった。１匹目の発症時期も、ボイセンベリーを与えた方が２か月ほど遅かった。
　

　
　ボイセンベリーは米国やニュージーランドで生産され、そのまま食べたり、ジャムに加工されたりしている。中皮腫の発症には活性酸素が関係するとみられており、安達助教授によると、ポリフェノールの抗酸化作用が発症を抑止している可能性がある。ブルーベリーやラズベリーなどにも抗酸化成分が含まれているが、ボイセンベリーは特に多く含むとされている。
　
　
　【アスベスト問題】がん発病との関連は
　
アスベストの直径は、髪の毛の５０００分の１と非常に細い。空気中にフワフワ漂い続け、無風の状態で３メートルの高さから落とすと、床に落ちるまで十数時間かかったとの報告もある。そのため呼吸の際に吸い込みやすい。痰（たん）とともにはき出される場合もあるが、気道の奥深くまで入り込み、肺を包み込む膜などに突き刺さる。
　　
一度突き刺さったアスベストは、異物を取り除こうと働く免疫の攻撃にもびくともしない。癌（がん）研究会癌研究所の石川雄一・病理部長は「体内にとどまるアスベストは、人体組織に悪影響を与え続ける。傷を受けた細胞は、遺伝子に少しずつ異変を起こし、がんなどが引き起こされる」と、病気を引き起こすメカニズムを説明する。
　　
アスベストによる健康被害には、肺がんや、臓器を包み込む薄い膜にできるがんの一種の中皮腫（ちゅうひしゅ）、肺の組織が硬くなって呼吸が苦しくなる石綿肺などがある。いずれも治療の難しい病気だ。特に、中皮腫はアスベストとの関連性が高く、発症者の８割が仕事でアスベストを吸い込んだことが原因とされている。
　
本人も知らずにアスベストを吸い込んでいる場合が多く、潜伏期間も中皮腫で３０〜４０年間と長い。その間は自覚症状もほとんどなく、発症まで危険性に気づかないことも珍しくない。
　
アスベストをどの程度吸うと、健康被害が生じるのか詳しいことはわかっていない。労働科学研究所の海老原勇研究員は「アスベストを吸い込む量に比例して、がんの発症の危険が高まるが、『ここまでは安全』という値はない。少量でも危険性はある」と語る。
　
アスベストを吸い込むと肺がんになる危険性が５倍高まり、さらに喫煙が加わると５０倍になるとの研究結果もある。他の要因と重なれば危険性は相乗的に高まるため、油断はできない。
　
　
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